分かりにくい曾祖父の愛(シミができても愛してる)
しみのひまご さん からの投稿
これは、私の母が学生時代のお話です。
母の大学の近くに曾祖父・曾祖母の実家があり、母は大学の授業が休講になるたび、曾祖父・曾祖母の家へ遊びに行っていたそうです。
曾祖父は地元の銀行の役員をしており、当時は有名な投資家でもあったため、地元の長者番付に名を連ねるほど、厳格な人でした。
その仕事人間である曾祖父を支えたのが、4人の子供を産み育てた曾祖母でした。
ある日いつものように曾祖母・曾祖父・母の三人で食卓を囲んでいると、曾祖父がふと何かに気づきます。
そして曾祖母の顔をみつめ一言。
「その~でこについとる黒いのはなんか。シミか。」
瞬時に固まる居間の空気。
心の中で曾祖父へ突っ込みを入れまくる「おじいちゃん!それを言ってはおしまいよ!!」ピタリと動きが止まった曾祖母は、黙って立ち上がり、台所で食器をも黙々と洗い始めます。
そこでやっと自分の問題発言を自覚した曾祖父。
なんと声をかければ分からず、台所の近くをウロウロウロウロ・・。
初めて目にする祖父母の喧嘩(?)というか、冷戦に固まる母(当時20歳)。
流石の投資家、職場では鬼と恐れられた曾祖父も、妻の威厳には逆らえません。
解決方法を自分で決めあぐねた曾祖父は、ついに孫である私の母のもとへ来て、一言「シミ消しのクリームはどこに売ってあるとね」
母は、曾祖父に美容液の売ってあるデパートを教え、いそいそと買いに行ったそう。
当時もう70歳を超えていた老夫婦。
それでもいくつになっても乙女は乙女であり、いくつになっても男は女心が分かっていないと、二人が亡くなった今でも親戚の間で話題に登ります。
男性諸君、奥さんのシミに気づいても、何も言わないでくださいね。