演劇がくれた勇気
designG さん からの投稿
ある日上司に呼び出されました。
「業績落ちてきた、営業もやってくれないかな」 「あの、今までの業務は?」 「それも兼ねてってこと、生き残れないよ」 ただでさえ残業続きで時間も無いのに、営業も? 目の前が暗くなりました。
「君、演劇なんかやってるみたいだけど、そんな歳だし、考えな、大会とかで優勝したとか実績あるわけじゃないだろ、まぁ考えといて」 自分は演劇をやっています。
そして数週間後、規模は小さいけど演劇の大会に出ることになっていました。
そもそも演劇を始めたのは半年前、歳も40越えてから、周りからは呆れられ、変な目で見られました。
家と会社を往復する平凡な日常、何かを残したい、演劇はずっと見る側だけど、いつか心を熱くさせるような作品を作りたい。
そんな思いが強くなり、演劇のワークショップに通い勉強し、素人仲間でチームを組んで、大会に出ることになったのです。
大会は審査員と観客の投票で一番面白かった作品が優勝となります。
優勝すれば、周りからは一目置かれることになります。
しかし、それは容易な事ではなく、ベテランからは「参加賞だろうね」「演劇を舐めている」、そんな声も聞こえました。
ですが、今回上演する作品には、ちょっとだけ自信がありました。
自分は素人だけど、「良い作品を沢山観てきた」という事実があったからです。
これで箸にも棒にもかからなかったら、「演劇は辞めよう、黙って上司の要件を飲もう」と思いました。
大会当日、歴戦の経験者にまじり、素人集団の作品が開演しました。
観客は「未経験者がどんなひどい演技をするのか」を見に来てるのでは?なんて風にも思いました。
終演後、審査員の講評が始まりました、「酷評」です。
笑い物です。
ですが、審査の結果は観客票が上回り、なんと「優勝」でした!
平凡に40年生きてきた自分が初めて手にした「優勝」は大きく、自分に自信を持てました。
翌日、上司に呼び出されました 。「営業、やるよね?」 「いえ」 「え?」 「この先のことを考えたいです、なんか自分でやれそうな気がして…」
その後、独立して、小さな会社を立ち上げました。
今はコロナでとても厳しいですが、なんとかやっています。
コロナが収束したら、また演劇もやりたいと思っています。